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コアコレクションとは、保存遺伝資源の中から選定した代表的な品種・系統のセットのことです。当ジーンバンクでは研究の効率化のためにこの考え方をさらに推し進め、きわめて少ない系統で遺伝的変異を幅広くカバーする研究用セットとしてのコアコレクションを開発しました。ゲノムの多様性、形態的特性、地理的分布などを考慮に入れたコアコレクションは、作物開発研究、新しい対立遺伝子の探索、連鎖不平衡研究、作物進化研究などに役立ちます。
利用可能なコアコレクション
ご利用にあたっての注意点
- 各品種の配布種子量は少量です。育苗の際は直接土に播種せず、湿らせたろ紙やペーパータオル等で発芽させてから移植することをお勧めします(参考: 発芽試験マニュアル)。
- コアコレクションは有償です。
- 世界のイネ
世界各地のイネ約3万7千点から来歴情報等に基づいて約300点に絞り込み、RFLP解析により対立遺伝子の多様性を90%カバーする69品種を選定しました。配布種子量は、各品種約20粒。
文献: Kojima Y et al. (2005) Development of an RFLP-based Rice Diversity Research Set of Germplasm. Breeding Science 55: 431–440.
文献: Tanaka N et al. (2020) Whole-genome sequencing of the NARO World Rice Core Collection (WRC) as the basis for diversity and association studies. Plant and Cell Physiology 61: 922–932. - 日本在来イネ
日本在来のイネ在来品種約2000点から、来歴情報等に基づいて約240点に絞り込み、SSR多型解析により対立遺伝子の多様性を95%カバーする50品種を選定しました。配布種子量は、各品種約20粒。
文献: Ebana K et al. (2008) Development of mini core collection of Japanese rice landrace. Breeding Science 58: 281–291.
文献: Tanaka N et al. (2020) Investigation of the Genetic Diversity of a Rice Core Collection of Japanese Landraces using Whole-Genome Sequencing. Plant and Cell Physiology 61: 2087–2096. - 日本在来トウモロコシ
日本国内各地の在来のトウモロコシを来歴の異なる本州以南在来種約1000、北海道在来種約300点に分け、それぞれからAFLP多型に基づいて69、17品種 (計86品種) を選定しました。配布種子量は、各品種約30粒。- 在庫僅少です(2023年8月8日現在、残り5セット)。
- 日本のアズキ (栽培種と野生種)
※JVaC-19を除いた配布となります。
NIASジーンバンク事業で収集した独自性が高いコレクションからDNA情報(SSR多型)に基づいて選定しました。アズキは日本で野生種ヤブツルアズキから栽培化された数少ない作物であり、研究や育種利用の他、進化(Evolution)と栽培化(Domestication)の関係を学ぶのにも適した材料です(教材: アズキは何故赤い? 野生アズキを探そう)。配布種子量は各系統約20粒。
文献: Xu HX et al. (2008) Genetic diversity of the azuki bean (Vigna angularis (Willd.) Ohwi & Ohashi) gene pool as assessed by SSR markers. Genome 51: 728–738.
- 在庫僅少です(2022年6月6日現在、残り5セット)。
- 日本のコムギ
来歴情報から選定された国内の小麦95品種と、遺伝学上の標準品種としてChinese Springを加えた計96品種から構成されています。在来品種と近年の育成品種がともに含まれており、育成品種については各年代の主要品種から選定されています。配布種子量は、各品種約20粒。
文献: 小島久代・藤田雅也・松中仁・関昌子・蝶野真喜子・乙部(桐淵)千雅子・高山敏之・小田俊介 (2017) 「日本のコムギコアコレクション」の作成と評価. 農研機構研究報告 次世代作物開発研究センター 1: 1–13.
- 在庫僅少です(2023年6月26日現在、残り4セット)。
- JWC82, JWC83, JWC87については育成者とNARO-GBの間のMTAにより海外への配布はできません。
- 日本のダイズ
ジーンバンクに保存されている日本の品種約6千点から地理的分布や来歴情報などに基づいて約1千点に絞り込み、その中から遺伝変異(SNP)と形質変異(開花期、熟期、粒大など)を広くカバーする96系統を選定しました。配布種子量は各系統約20粒。
文献: Kaga A et al. (2012) Evaluation of soybean germplasm conserved in NIAS genebank and development of mini core collections. Breeding Science 61: 566–592.
- 種子はSNPを解析した1個体のダイズより増殖したものです。
- 種子増殖が完了した94系統(2021年版)の配布を開始します。2023年9月27日現在、残り17セット。
- 世界のダイズ
ジーンバンクに保存されている世界の品種約4千点から来歴情報に基づいて341系統に絞り込み、それらの遺伝変異(SNP)と形質変異(開花期、熟期、粒大など)を解析し、96系統を選定しました。配布種子量は各系統約20粒。
文献: Kaga A et al. (2012) Evaluation of soybean germplasm conserved in NIAS genebank and development of mini core collections. Breeding Science 61: 566–592.
文献: Kajiya-Kanegae H et al. (2021) Whole-genome sequence diversity and association analysis of 198 soybean accessions in mini-core collections. DNA Research 28: dsaa032.
- 種子はSNPを解析した1個体のダイズより増殖したものです。
- 種子増殖が完了した80系統を配布します。2023年8月18日現在、残り33セット。
- 世界のソルガム
ジーンバンクで保存している世界各地のソルガム約3,500点から、来歴情報等に基づいて約300点に絞り込み、SSR多型解析により対立遺伝子の多様性を90%以上カバーする105品種を選定しました。配布種子量は、各品種約20粒。
文献: Shehzad T et al. (2009) Development of SSR-based sorghum (Sorghum bicolor (L.) Moench) diversity research set of germplasm and its evaluation by morphological traits. Genetic Resources and Crop Evolution 56(6): 809–827.
- 2023年7月6日現在、残り18セット。
- バイオマス研究用ソルガム
ジーンバンクで保存している世界各地のソルガム約4,500点のうち、来歴情報等に基づいて選んだ993点を圃場栽培し、乾物総収量、糖度、糖収量の特性が優れている26点を選定しました。このうち3点は雄性不稔系統(Aライン)であるため、維持系統(Bライン)もセットに加え29点としましたが、種子量の都合で配布できない系統を外して2023年版は20点での配布となります。配布種子量は、各品種約20粒です。- 2023年3月7日現在、残り20セット。
- 世界のリョクトウ
ジーンバンクに保存されているリョクトウ約2,000系統から、地理的分布や来歴情報で選抜した415系統について遺伝変異(SSR)を解析し、形質変異(開花期、熟期、粒大など)を広くカバーするように系統を追加して、96系統を選定しました。配布種子量は各系統約20粒。
文献: Sangiri C et al. (2007) Genetic diversity of the mungbean (Vigna radiata, Leguminosae) genepool on the basis of microsatellite analysis. Australian Journal of Botany 55(8):837–847.- 2022年5月19日現在、残り12セット。
- 世界のナス
※WEC-83を除いた配布となります。
ジーンバンクに保存されているナス約1,000系統から、安定した遺伝子型データが取得できた938系統について遺伝変異(SNP)を解析し、広く変異をカバーする100系統を選定しました。配布種子量は各系統約20粒。
文献: Miyatake K et al. (2019) Construction of a core collection of eggplant (Solanum melongena L.) based on genome-wide SNP and SSR genotypes. Breeding Science 69(3):498–502.- 在庫僅少です(2023年3月20日現在、残り8セット)。
- 世界のアワ
パスポート情報に基づいて、世界各地から収集された栽培アワ425系統、野生アワ(エノコログサ)12系統を選び、ウルチ・モチ性を支配するGBSS1遺伝子座に見いだされた転移性因子を利用したトランスポゾン・ディスプレー法で多様性を解析して栽培アワ88系統、野生アワ6系統を選定しました。配布種子量は各系統約50粒。
文献: Hirano R et al. (2011) Genetic structure of landraces in foxtail millet (Setaria italica (L.) P. Beauv.) revealed with transposon display and interpretaion to crop evolution of foxtail millet. Genome 54: 498–506.- 在庫僅少です(2023年1月17日現在、残り5セット)。
- 陸稲在来品種
茨城県農業総合センター生物工学研究所は保存する陸稲在来品種260点について、11の生態・生理形質による主成分分析とクラスター分析を行い、陸稲在来品種を7つの群に分類するとともに、分析結果に基づきコアコレクションとして32品種を選定しました。このコアコレクションは11形質の平均で86%の変異を含み、脱粒性、穂発芽性、葉いもち抵抗性など分析に用いていない形質の変異も含んでいます。このコアコレクションはイネの栽培特性を広げる育種素材としてだけでなく、イネの形質の多様性を把握するための研究素材として利用できます。
文献: 岡野ら. (2006) 陸稲在来品種コアコレクションの作成. 茨城県農業総合センター生物工学研究所研究報告 9: 13–25.- 在庫僅少です(2023年4月28日現在、残り1セット)。
- 除草剤スクリーニング用雑草セット
生産現場で深刻な雑草害が発生している一方、登録除草剤が不足する畑作物で問題となる主要な一年生雑草24種を選定しました。2~5草種を1セットとして7つのセットに分けて配布します。配布種子量は、100粒重と発芽率をもとに各種の発芽種子数が600~6,000粒程度となるように計算した量になります。
文献: 井原ら. (2021) 除草剤スクリーニング用雑草セット: 生産現場で問題となる畑作用一年生雑草の登録除草剤増加と効果的な利用法の開発・推進を目指して. 植調 55(2): 2–5.- 古くから国内に広く分布している草種だけでなく、近年、生産現場での雑草被害が報告される外来雑草の種子も取り扱います。増殖や試験で使用するにあたっては、外部に流出しないように適切な管理をお願いします。