在来品種データベース
生産地 | 鹿児島県鹿児島市 |
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作物名 | ダイコン |
品種名 | 桜島ダイコン |
学名 | Raphanus sativus L. var. hortensis Backer (アブラナ科) |
現地での呼称 | さくらじまだいこん |
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栽培方法 | 播種は8月下旬~9月上旬、収穫は1月中下旬。株間、畝間とも約1m(3尺)。30年ほど前からマルチ栽培が行われるようになり、土寄せや除草対策等の省力化の面から広く普及するようになった。ただし、現在もマルチを使わない伝統的な栽培をする人もいる。マルチを使わない場合 、根部に太陽光が当たると青首になって商品価値が下がるので、土寄せが不可欠。(土寄せするには葉を持ち上げる人と土寄せする人の共同作業で実施するか、葉を縛り上げて土寄せする必要がある。) 播種は、げんこつくらいの穴に固定種なら20粒、F1なら5粒程度播種する。4日後くらいに発芽してくるが、固定種の場合は、勢いの強すぎる個体や生育の悪い個体を間引き、均等に苗を生育させる。F1の場合は、基本的に生育や形状が安定しているため、生育が良い個体を残していく。2~3回に分けて間引きを行い、複数の個体を残しておくことで、生育初期の鳥や虫、強風による被害のリスクを軽減している。最終的に播種から1ヶ月後くらいの時期に1本立ちにする。 固定種の桜島ダイコンの集団内には雄大根(おでこん)と雌大根(めでこん)と呼ばれる形態の異なるタイプが存在することが知られている。ただし、これらのタイプ名と生物学的な雌雄とは無関係である。雄大根は葉色が濃く芯葉が立ち、根形は紡錘形。雌大根は草勢が小ぶりで根形は扁平形。採種現場ではこれら両者の望ましい個体を複数選んで他のダイコン品種から隔離できる場所で任意交配させ、雌大根の個体から種子を採ることが伝統的におこなわれてきたという(鹿児島資料3)。桜島ダイコンの巨大な根重は雑種強勢(ヘテロシス)によって維持されていることが遺伝解析によって明らかにされており(鹿児島資料4)、異形タイプを交配させながら採種してきた伝統的な知恵は貴重な技術といえる。 |
品種特性 | 草姿、根形とも巨大な晩生種で、鹿児島の誇る伝統野菜の代表種。通常は10kg位であるが、大きいものになると20~30kgのものも見られる。世界一重い大根としてギネスブックに認定されたことがある(胴回り119cm、重さ31.1kg) |
由来・歴史 | 貝原益軒著「大和本草付録」(1709年)に「薩摩大根は常のより大なり」と記録されていることから、江戸時代には大きな大根として作られていたようである。1804年に薩摩藩が出版した「成形図説」では「櫻島葍(さくらじまだいこん)」という名前と図絵が確認できる(鹿児島資料2および5)。平成20(2008)年3月27日に「かごしまの伝統野菜」に認定された。 |
伝統的利用法 | 煮ても煮崩れしにくく、味がしみこみ易い。果肉も緻密で白いことから、漬物用から煮物用とその用途は広い。おでん、煮しめ、味噌汁、ブリ大根、乾燥大根(ぐるぐるまき)など。昔は年が明けて寒さが厳しくなると家族で切り干し大根を作って保存していた。 |
栽培・保存の現状 | 種子は、農家個々で保存しているが、近年は鹿児島県がF1品種「桜島おごじょ」を開発した。種子は農協が「桜島おごじょ」を道の駅「桜島」火の島めぐみ館で固定種を販売している。 |
消費・流通の現状 | 青果物は道の駅「桜島」火の島めぐみ館や鹿児島市内のJA直売所等で販売し、前者は乾燥大根も販売している。 |
参考資料 |
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調査日 |
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備考 | F1品種「桜島おごじょ」の開発者は、F1品種は経済的においしく品質の良い桜島大根を普及するのに使い、固定種は雑種強勢を最大限に活かしてコンテストなどに出品する大きな大根作りをめざすのに使うという、それぞれのコンセプトで、使い分けを提唱している。 |