在来品種データベース

「笹川錦帯白菜」品種情報
生産地山口県岩国市錦見
作物名ハクサイ
品種名笹川錦帯白菜
学名Brassica rapa L. var. glabra Regel Pe-tsai Group (アブラナ科)
現地での呼称ささがわきんたいはくさい、きんたいはくさい
写真笹川錦帯白菜の栽培風景 笹川錦帯白菜の草姿 伸長してきた花茎 外葉をめくったようす 外葉表面には毛じがない 外葉裏面にも毛じがない 笹川錦帯白菜の球 笹川錦帯白菜の球(サイズが異なるもの) 笹川錦帯白菜の断面(サイズが異なるもの) 笹川錦帯白菜の白和え
栽培方法

錦見地区の土壌は錦川が運んだ沖積微砂質壌土(1.5m前後の深さ)で地力が高く、地下水位は1m以下で排水も極めて良好である。このような地の利を生かした栽培が行われてきた。

栽培方法として、昔は直播栽培であったが、現在はセルトレイ(128穴)を使った移植栽培が行なわれている。うね幅は120cm、株間40cm、条間45cmで2条植えとする。

直播の場合、8月末から9月はじめに播種すると、11月上旬から12月上旬に収穫できる。また9月10~15日に播種すると、11月下旬から1月上旬に収穫可能である。

移植栽培では、セルトレイに9月1日(高温が続くときは少し遅らせて3日)に1穴3粒播種して育苗し、14~20日後、本葉2~3枚で本畑に定植すると、11月上旬~12月下旬に収穫できる。また、9月10日(あるいは15日)にまくと、2週間後に定植、11月の終わりから1月10日ころに収穫できる。

本葉6~7枚で1回目の追肥と土寄せを行い、以後、7日おきに追肥と土寄せを2回行なう。定植後、50日前後から固く結球したものから収穫する。

高温時の早播きは、アブラムシ類などの害虫、ウイルス病、軟腐病が発生しやすく、抽台や不結球の危険性がある。虫害対策として、防虫ネットや早期防除、寒害対策として、年明けの防寒対策に留意する必要がある。(以上、山口資料2)

品種特性

球は腰の低い円筒型で先端がやや膨大する。球重は2~3kgである。球質は軟らかく、肉質は柔軟多汁で繊維が少なく、甘みがあり、生食も可能である。煮物にすると、短時間で火が通り、とろけるようになる。

葉色は外葉から内葉に向かって緑色から淡緑色になり、球色は外から内へ、黄白色、白色となり中芯部は淡いクリーム色である。

早生種で、耐寒性も強くない。早播きするとウィルス病が発生しやすい。(以上、山口資料2)

由来・歴史

結球ハクサイは明治3(1870)年に清から名古屋に入り、明治8(1875)年には東京の内藤新宿へ導入された。日清・日露戦争後、盛んに種子が入り、「愛知白菜」や「松島白菜」などが育成された。(以上、山口資料1)

岩国市錦見地区では大正時代中ごろ、藤田技手の紹介でハクサイ品種「直隷」、「芝罘(しばふ)」が栽培された。前者の球は筒形、後者はまくわ瓜型だったので、荷造りの容易な「直隷」が栽培面積の9割を占めた。

大正14年「野崎白菜」がリリースされるとともに上田政生氏が試作し、岩国町農産物品評会で特等賞を受賞したことをきっかけに栽培が急増した。その後、改良品種「野崎2号」と「野崎3号」も栽培され、広島や徳山方面まで販路が拡大したが、太平洋戦争以降は種子の入手が困難となり、自家採種で生産量は昭和25(1950)年ころまで減少したが、上田氏らが野崎採種場を訪問し、「野崎2号」、「野崎3号」の種子を少量分譲を受け、採種方法を見学するなどして、品種育成の足がかりをつくった。

昭和25年、組合役員の笹川氏、中井氏などが、地元で問題になっていたウィルス病に抵抗性を持つ品種を作ろうと、「野崎2号」、「野崎3号」から交配選抜を繰り返し、抵抗性かつ純白美味、品質良好な品種を昭和27年に育成した。昭和29(1954)年に「笹川錦帯白菜」の名前で品種登録し、中国地域の主要品種になった。

その後種子販売量の減少で、系統選抜を10年間中断したため、品質・形状が悪化したが、平成14(2002)年から優良系統選抜を再開し、現在は育成時と同等な品質・形状に再生した。(以上、山口資料2)

伝統的利用法

浅漬け、水炊きなど。

近年、サラダや白和え、ベーコン入りブイヨンスープなど。強火でさっと炒めたときの歯ごたえや香りは春キャベツに似ているという。通常のハクサイより離水が少ないので、餃子の具などにも向く。(山口資料1)

栽培・保存の現状

平成11(1999)年、山口県の伝統野菜掘り起こし事業に、笹川錦帯白菜と岩国紅大根が取り上げられ、西味農業生産組合では①優良系統の選抜を継続する②地元特産として栽培を定着させる③地域全体の消費者へのPRに取り組む(学校給食提供)という3つの目標を立てて積極的に取り組んできた。

生産面積の推移は、平成13年8戸、8a→令和4年15戸、15a→令和6年10戸、13aである。

採種事業は選抜圃場から30株程度選抜し、ハウスに移植し、ミツバチによる交配を行って採種している。採種した種子は、JA、生産組合、種苗店店舗で販売している。

消費・流通の現状

1)学校給食へ提供した量は平成14年は260kgだったが、令和5年は500kgであった。

2)西岩国駅の「ふれあい交流朝市」で12月の第2土曜日に試食会を行ない、11月~1月の期間に販売を実施している(笹川錦帯白菜は500kgを販売している)。

3)共同出荷による岩国市場で給食用と量販店用の販売を行なっている。平成16年は2tだったが、令和5年は2.5tの販売を行った。

参考資料
  • 山口資料1)山口県農業試験場(2005)『やまぐちに伝わる野菜と果樹』.
  • 山口資料2)錦見農業生産協同組合(2025)笹川錦帯白菜、令和7年1月6日付資料.
調査日2025/1/6
備考平成14(2002)年から毎年、小学校、中学校の各1学校で食育活動を実施している。令和3年から動画制作し、市内の小学校で試写を実施。令和4年から岩国小学校2年生を対象に校内花壇に笹川錦帯白菜と岩国紅大根を栽培し、観察、試食を毎年実施している。