在来品種データベース

「広島菜」品種情報
生産地広島県広島市安佐南区川内
作物名ツケナ
品種名広島菜
学名Brassica rapa L. var. pekinensis (アブラナ科)
現地での呼称ひろしまな
写真広島菜の畑@広島市2019-02-02 固定品種であるにもかかわらず、見事に生育がそろっている。広島菜の畑は住宅街の合間にある@広島市2019-02-02 広島菜の収穫@広島市2019-02-02 広島菜の種子@広島市2019-02-02 広島菜の育苗@広島市2019-02-02 広島菜の採種圃@広島市2019-02-02 ある広島菜の系統における理想的な採種親の形態の一つ@広島市2019-02-02 広島菜の親株@広島市2019-02-02
栽培方法

広島菜栽培地の川内という地区は太田川と古川の河川敷である。地下水位は高く表土には腐植を含んだ粘土層があるが、下に砂地層があって湿度と水はけの両面を併せ持った土壌であり、広島菜の栽培に適した土地である。

伝統的な播種時期は9月上旬~10月上旬。収穫は11月~1月末ころ。収穫時の葉数は50枚程度、約2kgになる。ハウス・トンネル栽培で11月中旬に播種して2月下旬~4月上旬に収穫、2月下旬に播種して5月に収穫する作型もある。

低温感受性が高いので冬播きすると30枚で抽台してしまう。これを避けるには電熱線で加温育苗する必要がある。

生育を揃えるには間引きの技術も重要。泥はねは病気の原因になるので、それを防ぐために昔はわらを入れたが、今はケントップという農業資材を使う。

広島菜を長年栽培してきた生産農家の一人、倉本氏によると、種子親として1)種子親には抽台が遅いもの、2)株が左右対称で葉の高さがそろったもの、3)横から見て葉脈がまっすぐ平行に走るものを選ぶ。選んだ親株はいったん干してから採種畑に植え直すと種子の付きがよいという。

品種特性

信州の野沢菜、九州の高菜と肩をならべる日本三大ツケナの一つといわれる。ハクサイとカブの中間的な性質を持つ。漬物にするとシャキシャキした歯ごたえがあるのに筋っぽさがなく歯切れが良い。ワサビのような風味がある。ハクサイの葉の表面には毛があるが、広島菜はない。

農家ごとに自家採種で維持されているので、立型と開張型など農家によって形質が異なるので多くの系統がある。耐暑性がある一方で、低温感受性があって低温下で育苗するととう立ちしやすい。

由来・歴史広島菜の由来にはいくつもの説がある。一つは、安芸国藩主・福島正則の参勤交代に同行した観音村(広島市西区観音町)の住人が京都本願寺に参詣した際に種子を譲り受け、持ち帰って栽培したのが始まりというもの(広島資料3)。二つめは、明治25(1892)年(あるいは明治のはじめ)ころ、川内村の木原才次(あるいは佐市)氏が京都西本願寺参詣の後、洛外某寺の菜園で広島では見ることのない漬け菜を発見し、住職に乞うて数株もらい受け、帰郷後、在来の京菜と交雑・選抜したもの(あるいは数十年にわたって改良に専念して作り出したもの)が由来という説などがある(広島資料4)。
伝統的利用法漬物。浅漬けと古漬けがある。漬物はお茶漬けにもなるが、広島菜のおむすび(おにぎりを広島菜漬で包んだもの)、広島菜巻き(海苔巻きの海苔の代わりに広島菜を使う)、江波まき(海苔巻きの具として細かく刻んだ広島菜漬、削り節、ゴマを醤油であえたものを使う)にも利用される。
栽培・保存の現状かつては畑の中に住宅がある景観だったが、宅地化が進み、現在は住宅の間に畑があるような状況である。2015年、農業に従事する30~40歳代の若い世代が集まって「川内若農家の会」が発足し、現在12名。
消費・流通の現状出荷先は複数ある広島市内の漬物加工場である(生産量の半分以上が農協の加工場)。こうした加工業者との契約栽培が一般的。
継承の現状川内小学校では平成10年ころから「総合的学習」のなかで広島菜を子どもたちが学ぶようになり、栽培、漬け込み、給食でのレシピ作りも行なわれている。(広島資料4より)
参考資料
  • 広島資料3:タキイ種苗株式会社出版部「地方野菜大全」農文協(2002)
  • 広島資料4:花井綾美(2023)『土と人と種をつなぐ広島』、一般社団法人むすぶ広島.
  • ※広島資料4の第二章広島菜のはなし(p12-61.)は広島菜について多様な視点から詳しく解説があり、種子や名前の由来についての解説(p14-17)も詳しい。
調査日2019/2/2
備考倉本氏の畑を見せてもらったが、F1品種と見間違うほど、形質が極めて良くそろっていた。採種、播種後の間引き、栽培に関する高い技術が組み合わさっている結果だと思われる。