在来品種データベース

「土居分小菜」品種情報
生産地岡山県真庭市黒杭、藤森、種、粟谷
作物名ツケナ
品種名土居分小菜
学名Brassica rapa L. (アブラナ科)
現地での呼称どいぶんこな
写真土居分小菜の栽培風景@岡山県真庭市種(圃場:遠藤正明)、2024年11月11日 土居分小菜の生育途上の草姿。葉の表面に毛じはない 土居分小菜の草姿、2024年11月11日 根部は青首である 土居分小菜の漬物(塩漬け) ダムに沈む前の黒杭地区の風景。左から右下に川が流れており、川を挟んで田があり、川の向こうに道を挟んで家屋が並んでいる。家屋の向こうに田と里山がみえる(写真は浜子尊行氏提供)
栽培方法

播種は9月20日前後(気温が少し下がる時期)、収穫は11月下旬。収穫は草丈が30~50cmになったころを目安にする。他の作型として、4月播種、5月下旬から6月収穫もある。

1965年に出版された岡山資料1に、黒杭地区の古老、清水一郎氏が書簡に残した土居分小菜のダムに沈んだ栽培地の地理的条件や栽培法に関して次のような記録がある。概略のみ記すと、水没した黒杭字西ヶ市という場所は、土居分小菜栽培に適した土地であった。小砂利混じりで三尺以上の深い肥土のある土地で、一日中日当たりがよく、50mほど離れて河瀬が長く続き、秋の夜は霧が多かったという。種子は何十年にもわたって優良株を選抜しながら改良されたものだという。播種時から収穫まで十数回堆肥を施し、草丈を二尺五寸(約75cm)くらいに伸ばして、漬物用にしたという。

多肥条件で栽培したのは、野沢菜と同様、サイズを大きくするだけでなく、収穫期にかかる霧の効用もあいまって野菜の繊維の歯ざわりを軟らかくする目的もあったと思われる。

品種特性

草姿は立生。葉は卵~倒卵型で、しばしば途中に切れ込みが入る。葉面には毛じがないが、少し波打つ。葉縁の鋸歯はほとんどない。耐寒性が強い。根部も多少肥大があり、青首である。

茎葉には甘み、旨味があり、わずかに心地よい苦みがある。さらに株の中心部の若い葉にはイソチオシアネート様の辛味がある。葉柄はやや長くシャキシャキ感がある。

由来・歴史

洪水調節と発電を目的とした湯原ダムが昭和30(1955)年に完成したのにともない、中国地方最大の面積(455ha)となった湯原湖に黒杭、小童谷、三世七原地区の一部が水没した。

岡山資料1によると、土居分小菜は水没した黒杭字土居分やその周辺で栽培されていた葉菜で、その名は(おそらく味と外見の素晴らしさが)真庭地方一帯に知られていたという。

伝統的利用法

漬物(塩漬け)や煮物に用いられた。

近年、土居分小菜を現代的に食べる方法が模索されている。コロッケ、餃子、パスタの具材にする。葉を温風で乾燥させて粉末にして焼き菓子やパンに練り込むと、独特の青臭さと甘みが味わえる。

栽培・保存の現状自家用栽培している人が、真庭市湯原地域に数名程度。
消費・流通の現状出荷栽培者がいない。基本的に自家用栽培のみである。蒜山にある合同会社蒜山蒜耕藝では自社で栽培した土居分小菜を自社のレストランで提供することがある。
参考資料岡山資料1)二川村史刊行会(1965)土居分小菜「二川村史」p517-518.
調査日2024/11/11