在来品種データベース

「不明 (アオバナ、オオボウシバナ)」品種情報
生産地滋賀県草津市下笠町
作物名アオバナ、オオボウシバナ
品種名不明
学名Commelina communis L. var. hortensis Makino (ツユクサ科)
現地での呼称あおばな
写真あおばなの畑 あおばな近接撮影 収穫されたあおばな あおばな花弁の汁をしぼる あおばなの汁を含ませた和紙を天日に干す 青花紙の製品
栽培方法2月にビニールハウス内の育苗箱に播種、3月にトンネルをかぶせた畑に苗を仮植えしたのち、5月に本畑に定植する。以後、肥培管理によって栄養成長と生殖成長のバランスをとって、茎葉を茂らせすぎたり、必要以上に草丈を大きくしたりしないように注意しながら、なるべく多くの花序がつくように植物体を育てる。途中、支柱や紐で植物体の倒伏を防ぐ、7月初旬から8月上旬に開花を迎える。開花期間中は原則毎日午前中に、その日に咲いた花の花弁を手摘みで収穫する。その後、ただちに青色色素コンメリニンの液体をしぼり出し、手作業で青花紙に加工する。開花終了後、8月下旬に種をとり、翌年の栽培につなげる。収穫期の花の花弁については、①面積が広い ②厚い ③色が濃い ④よく縮れている、の4条件を満たすものがよいとされている。その実現のため、このような花をつける個体を選んで採種するとともに、開花直前に追肥をおこなう。
品種特性アオバナ(Commelina communis L. var. hortensis Makino)は、ツユクサ科のツユクサCommelina communis L.を祖先野生種に持つ。またツユクサ属で唯一、国内外で唯一の栽培植物である。ツユクサと比較すると、植物体や花弁が大型化している。また、ツユクサには苞の毛の特徴に変異が認められ、異数体が多数存在するのに対して、アオバナには苞に毛があり、染色体数が2n=46である。
由来・歴史青花紙が近江の特産品であることを記した史料に『毛吹草』1638年があり、遅くとも17世紀にはその存在知られていたことが確認できる。また、栽培植物としてのアオバナが確認できる最古の史料は『物類品隲』1763年である。江戸時代、青花紙は草津宿の名物として知られ、『東海道名所図会』1797年、『伊勢参宮名所図会』1797年、『本草綱目啓蒙』1803年などに記録された。明治時代、産物誌『教草 青花紙一覧』(1873)に収録された。
伝統的利用法青花紙は、下絵用絵具として手描き友禅染(京友禅、加賀友禅など)や絞染(京鹿の子絞、有松絞など)の製作に利用され、その実践は現在も続いている。これは、青色色素で描いた下絵が、霧をふくか、水で洗えば跡を残さず消える性質を持つためである。また、江戸時代末期までは浮世絵(錦絵)の彩色用絵具として(下山・松井2006、田辺2017)、明治時代までは菓子の着色に用いる食用色素として(落合2019)、それぞれ利用されてきたことが確認できる。
栽培・保存の現状青花紙の加工技術は、農家のおもに女性によって継承されてきた。専用の刷毛以外は農具や生活用具などを使用し、手作業で青色色素の液体を和紙にしみこませ、乾燥させる作業を繰り返す。2015年頃から栽培農家は3戸、生産数は10束以下であった。2021年現在、栽培者は1名、生産数は1束以下である。
消費・流通の現状アオバナ花弁に含まれる青色色素は、和紙に染み込ませ、乾燥させて、青花紙に加工される。和紙を支持体に液体の青色色素を乾燥、凝縮したものが青花紙である。青花紙の生産や取引の単位は、96枚を1セットとした束(そく)である。乾燥重量で最低300gの色素が1束分の和紙に含まれた時点で、青花紙は完成と判断される。通常、1束に2週間以上の日数が必要である。青花紙は末端価格で1枚3000円程度。
継承の現状2003年「草津あおばな会」が設立され、アオバナを活用した地域おこしが進められた。2020年「草津青花紙製造技術保存会」が設立され、青花紙の製造技術の継承に向けた取り組みが開始された。龍谷大学は、2018年に草津市と包括協定を結び、市民向けに龍谷講座を開催するなどして、情報発信に協力している。また、農学部講義「比較地域文化論」では、詳細な講述が行われている。
参考資料
  • 滋賀資料7)阪本寧男・落合雪野1998『アオバナと青花紙―近江特産の植物をめぐって』サンライズ出版
  • 滋賀資料8)落合雪野2012「アオバナのゆくえ―地域農業と特産物の変容」松井健・野林厚志・名和克郎共編『生業と生産の社会的布置―グローバリゼーションの民族誌のために』国立民族学博物館論集1:181-206.
  • 滋賀資料9)落合雪野2016「近江特産の青花紙-その『これまで』と『これから』」染織情報α11:2-3.
  • 滋賀資料10)落合雪野2016「見えない色をみる-アオバナと青花紙の青」降旗千賀子・加藤絵美・佐川夕子編『色の博物誌-江戸の色財を視る・読む』目黒区美術館
  • 滋賀資料11)落合雪野2019「植物染料『青花紙』による和菓子の色付け」『和菓子』26:5-15.
  • 滋賀資料12)大西稔子 2017 「栗東市域での青花紙生産と青花紙仲買人の販路」栗東歴史民俗博物館紀要23:1-16.
  • 滋賀資料13)下山進・松井英男2006「浮世絵版画に使用された青色着色料の研究」『文化財情報学研究』3:21-28.
  • 滋賀資料14)立原位貫2010『一刀一絵』ポプラ社
  • 滋賀資料15)田辺昌子2017「春信錦絵の絵具」『鈴木春信-江戸の面影を愛おしむ』東京美術
  • 滋賀資料16)長谷川嘉和2001「青花」日本工芸会近畿支部編『工芸の博物誌―手技を支える人ともの』淡交社
  • 滋賀資料17)藤島弘純2010『雑草の自然史―染色体から読み解く雑草の秘密』築地書館
  • 滋賀資料18)菊池昌治2008『染織の黒衣たち』法政大学出版局
  • 滋賀資料19)Makino T. 1901 Observations on the flora of Japan. Bot. Mag. Tokyo 15:164-172.
調査日
  • 2018/7/14
  • 2022/8/22