在来品種データベース

「近江かぶら」品種情報
生産地滋賀県大津市坂本
作物名カブ
品種名近江かぶら
学名Brassica rapa L. var. rapa
現地での呼称おうみかぶら
写真近江かぶら(写真は大津市の漬物店「八百與」が撮影したもの) 近江かぶらの畑(大津市職員と江頭)@大津市 近江かぶの畑。たまにミズナのような葉を持つ変異個体が出現するという@大津市
栽培方法9月15日ころに播種。12月下旬~1月に収穫する。
品種特性青首の扁平な白い丸カブ。下部が凹む。葉の表面に毛じがない。
由来・歴史

江戸時代に大津市尾花川を中心に約400年前から栽培されていたと考えられているが、その来歴は分かっていない。一説には、近江かぶらは聖護院かぶらの祖先品種であるともいわれるが、佐藤(2021)(滋賀資料2)は、DNAマーカーを用いた系統解析の結果、現在の「聖護院カブ」の祖先種は、現存しない円い大型の白カブ「兵主カブ」であったことを推定している(兵主カブについては滋賀資料3に詳しい)。

江戸時代に精進料理屋を営んでいた「八百與」(大津市)は、当時から料理に近江かぶらを用いていたが、嘉永3(1850)年ころ、保存性のよい近江かぶらの加工品として酒粕漬けを作るようになった。その後(江戸時代)、九条家に近江かぶらの酒粕漬けを贈ったところ好評をいただき、それがきっかけとなり大正3(1914)年に宮内省から御用達があった。また明治28(1895)年、京都で開催された第4回 内国勧業博覧会で、近江かぶらの酒粕漬けに対し褒状をいただいている。

伝統的利用法大津市の老舗漬物屋「八百與」がつくる長等(ながら)漬け(酒粕漬け)に利用する。明治17~23(1884~90)年に滋賀県令・知事を務めた中井弘氏の発案で、長等山のふもとの特産品にちなんで、近江かぶらの酒粕漬けを長等漬けと呼ぶようになった。
栽培・保存の現状昭和30年代末から次第に栽培されなくなった。2014年の取材時には老舗漬物店「八百與」に出荷する栽培者は一人であった。
消費・流通の現状ほとんど流通していない。
継承の現状平成21(2009)年から滋賀県農業技術振興センターが保存していた種子を使って滋賀県、大津市、JAレーク大津(現在のJAレーク滋賀)、龍谷大学農学部が連携して近江かぶらの復活に取り組み、栽培農家や販路の開拓を続けた(滋賀資料1)。現在、大津市役所に種子がわずかに残っているが、更新・選抜技術を持つスタッフがおらず、このままでは種子が途絶える可能性がある。
参考資料
  • 滋賀資料1)滋賀のおいしいコレクション「伝統野菜「近江かぶら」を知っていますか? https://shigaquo.jp/report/5366.html(2024年2月27日確認)
  • 滋賀資料2)佐藤茂(2021)『近江を中心とした伝統野菜文化史』養賢堂、p39.
  • 滋賀資料3)兵主大社(齊藤慶一・井口雄)編(2021)『兵主大社御鎮座壱阡参百年記念 よみがえった幻の蕪 新兵主蕪への挑戦』
調査日2014/11/25
備考近江の伝統野菜の一つである。 https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/nougyou/ryutsuu/18357.html