在来品種データベース

「不明 (サツマイモ)」品種情報
生産地三重県志摩市磯部町穴川
作物名サツマイモ
品種名不明
学名Ipomoea batatas (L.) Lam.
現地での呼称クネンカクシ、キイモ、キミイモ
写真2016年まで長年栽培を続けていた女性のクネンカクシの畑@志摩市磯部町穴川(写真は坂番雅美氏提供) 2016年まで長年栽培を続けていた女性のクネンカクシの芋@志摩市磯部町穴川(写真は坂番雅美氏提供) クネンカクシの芋の外観(ボールペンは15cm)2022-10-10@松阪市 クネンカクシの草姿とつる色(アントシアニンの発色がない) クネンカクシの葉 芋を煮る/自家用煮切干し作り@志摩市磯部町穴川 茹でた芋の皮をむく。穴川以外では皮をむいてから煮ることが多い/自家用煮切干し作り@志摩市磯部町穴川 皮をむいた隼人芋/自家用煮切干し作り@志摩市磯部町穴川 皮をむいた茹で芋を丸ごと干す/自家用煮切干し作り@志摩市磯部町穴川 茹で芋を一日干した後に切る/自家用煮切干し作り.JA志摩で販売されている煮切り干しはスライスされているが、穴川での切り方は伝統的にくし切りである@志摩市磯部町穴川 自家用にさまざまな種類(クネンカクシ(手前)、シルクスイート、隼人芋)の煮切り干しをつくる。@志摩市磯部町穴川 クネンカクシの煮切干し/自家用@志摩市磯部町穴川 近年干し芋用に栽培されるようになった鹿児島の在来品種「隼人芋」@穴川 皮むき作業/販売用きんこ(干し芋の別名)作り、阿児町では皮を剥いてから茹でる@「芋の館」志摩市阿児町国府 芋を干す/販売用きんこ(干し芋の別名)作り@「芋の館」志摩市阿児町国府
栽培方法

3月中旬に伏せ込み(種芋を植え付けて芽だし)する。約60日後、つるが20~30cmになったら基部を2,3節残してつるを切り取り、5月末~6月(6月24日に行われる伊雑宮で行われる御田祭のころが最適)につるを定植する。昔は海藻のアマモを拾ってきて肥やしにした。定植後約130~150日(10月から11月中旬まで)に収穫する。収穫した芋は一ヶ月保存して12月に煮切り干しの加工を行う。

三重資料1によると、かつてはコムギとクネンカクシの二毛作が行われていた。11月~6月上旬までコムギを栽培し、その跡地を耕起し畝立てしたところにクネンカクシを植えた。

品種特性

芋の形は短紡錘形など。収量は少ない。つるの色は緑、芋の皮色と肉は黄白色。かための粉質。加熱するときれいな黄色になるのでキイモ、キミイモとも呼ばれた。食味は良好である。この品種が何であるかは、現時点では断言できないが、三重資料3の七福の説明と写真(紡錘形の芋が混じり、つるにアントシアニンが出ない特徴がみられること)と三重資料2の「(七福は)三重の志摩から熊野の海浜地帯で、過日の日常食または常備食への愛着から高齢者によってわずかにつくられている」との記述からキイモ、クネンカクシなどと呼ばれてきたさつまいも品種は七福である可能性が考えられる。

干し芋(現地ではキリボシと呼称)の色は灰緑色になって見た目は劣るものの、甘味は少ないが、風味がよく、噛んでいるうちに味が出てくる。年配の人は懐かしい味として好む傾向がある。

由来・歴史

三重資料1によると、「クネンカクシ」と呼ばれるようになる前はキイモとかキミイモと呼ばれ、キリボシ用に穴川地区一帯でつくられていたが、近年、栽培者がほとんどいなくなり、昭和6年生まれの女性が2016年まで栽培しながら種芋をつないでいた。

また同資料によれば、昭和16年~25年の9年間、政府統制管理によりサツマイモは収量の多い護国藷(ごごくいも)の栽培を強制されたが、キリボシをつくるために隠れて栽培し種芋をつなぎ、9年隠れて栽培したのでクネンカクシと呼ぶようになったと、穴川集落の高齢の男性が証言したという。

伝統的利用法煮切り干し。穴川の地元ではニッキ、キリボシともいう。近年導入された鹿児島在来のサツマイモ品種「隼人芋」はにんじんいもという別名があるとおり、煮切り干しにすると鮮やかなオレンジ色になる。これが志摩地方で作られてきたナマコの干し物「きんこ」に似ていることから、隼人芋の煮切り干しも「きんこ」と呼ばれるようになったという説がある。
栽培・保存の現状クネンカクシの栽培者は数名程度。干し芋用のサツマイモ栽培者は兼六、シルクスイート、ツルイモ、隼人芋など複数品種を同時に栽培していることが多い。
消費・流通の現状クネンカクシのキリボシは自家用のみで流通はしていない。
参考資料
  • 三重資料1)神田幸英(2019)「穴川集落とクネンカクシ」(手記)
  • 三重資料2)塩谷 格(2006)「サツマイモの遍歴 野生種から近代品種まで」法政大学出版局、p209、212.
  • 三重資料3)さつまいも品種 詳説(暫定版)https://www.jrt.gr.jp/var_s/index_spv.html
調査日
  • 2022/10/10
  • 2022/12/14
備考

三重資料2によると、七福は1900(明治33)年広島の窪田勇次郎・吉松兄弟サンフランシスコから在来品種「イタリア」を持ち帰り、七福と名付けて知人に勧めたといわれている。1922年愛媛県農事試験場が七福藷の名で全国に配布したものである。

三重県志摩地方ではさつまいもの干し芋(ニッキ、キリボシ、煮切干しとも呼ばれる)が郷土食である。県の志摩の行政や農協が1985(昭和60)年ころから特産品として生産・販売に力を入れ始めた。「芋の館」(阿児町国府)は加工用サツマイモ品種「隼人芋」を使って1988年から隼人芋を使った煮切り干し(きんこ)加工に取り組み始め、2011年に乾燥ハウスを導入し、品質の高いきんこ作りや小学生・社会人への継承活動を行ってきた。