在来品種データベース

「温海カブ」品種情報
生産地山形県鶴岡市温海地区(旧温海町)
作物名カブ
品種名温海カブ
学名Brassica rapa L. var. rapa (アブラナ科)
現地での呼称あつみかぶ
写真採種1)温海カブの採種のための移植 採種2)種莢は莢に少し青味が残っている状態で干す 採種3)棒やまっか木(先が二叉に分かれた木の棒)などで莢をたたいて種子をはじき出す 採種4)目のおおきなざると小さなふるいで、大きな莢殻を除く 採種5)少し莢殻が残っている種子。これを唐箕にかける 採種6)唐箕にかけて細かい莢殻を除く 温海かぶ 温海かぶの甘酢漬け 焼畑地2)焼畑で育った温海カブは葉が小さい 焼畑地3)収穫された温海かぶ 焼畑地4)焼畑に咲く温海かぶの花 焼畑地1)温海かぶの焼畑地は斜度がきついほど良いカブができると言われた(登り綱がみえる)
栽培方法鶴岡市温海地区を中心に焼畑で栽培される。8月のお盆前後に火入れを行ない、火入れ当日か、2、3日以内に種子を播く。途中、間引きを2、3回行なう。適当なサイズになったカブを順次10月から11月末(降雪前)まで収穫する。
品種特性赤い丸カブで肉質が良くしまり、適度な甘さと辛さを持っており、漬物に向く。葉は開き、表面に毛がある。B型種皮(種子を水に浸したときにペクチン様の皮膜ができない)をもつ。
由来・歴史

温海(あつみ)カブの来歴は不明であるが、山形県に現存する在来野菜の中でも最も古い歴史を持つものの一つである。

松竹往来(1672)に「温海蕪」の記載があることから、300年~400年前にはすでに温海の特産物であったことがわかる。また、江戸時代の寛政・文化(1800年前後)の古文書にカブ1個が4文に相当(18個で米一升に相当)したことが記されており、当時から商品価値が高かったことを物語っている。

伝統的利用法甘酢漬けやなます。かつてはアバ漬け、たくあん漬けも作られた。アバ漬けは味噌と塩をベースにした漬け物であるが、アバ漬けもたくあん漬けもほとんど作られなくなり、昭和50年代以降、現在も90%以上は甘酢漬けになった。
栽培・保存の現状

2013(平成25)年から2022(令和4)年までの10年間平均で、温海カブの生カブ出荷人数は84人、火入れ許可申請件数および申請面積は平均125件、栽培総面積は12.2ha、集荷量は102.8tである。

温海カブの種子のほとんどは鶴岡市一霞の農家の自家採種による。

消費・流通の現状生かぶの大部分は農協出荷で、一部直売所やスーパーなど。漬物に加工して直売所や通信販売などを行う農家もある。一霞温海かぶ漬加工直売所「霞堂」が1984(昭和59)年に設立され、毎年、温海カブの甘酢漬けの加工販売を行ってきたが、高齢化と気候変動などの影響で原料不足に悩むようになった。
継承の現状温海地域の焼畑で栽培される温海カブの安定生産とブランドカの向上を図る目的で、2012(平成24)年に「焼畑あつみかぶブランドカ向上対策協議会」(忠鉢孝喜会長;平成29年から「あつみかぶ」とひらがな表記に変更)が設立され、優良種子採種実証事業、「焼畑あつみかぶ」のロゴマークの制定、取扱店舗に販促ツール(のぽりやリーフレット)の配布、鶴岡や首都圏でのイベント参加によるPR活動、ブランドカ向上のための学習会などを行ってきた。
参考資料
調査日
  • 2015/11/11
  • 2020/11/3
  • 2023/12/11
備考

森林所有者が伐採後の再造林とその後の保育経費の負担を軽減することで人工林の若返りによる森林資源の循環を図りながら焼畑の温海カブの伝承にも取り組むことを目的として、温海町森林組合が2015(平成27)年度から2022年度まで「中山間集落モデル農林業実践事業」を実施した。

組合が森林所有者と長期保育契約を結び、植栽から10年間の保育を行う。その間、焼畑栽培の温海カブとワラビの栽培と販売を行い、その収益を保育の経費に充てて持続性を確保しようとする試みである。