在来品種データベース

「大島かぶ」品種情報
生産地宮城県気仙沼大島
作物名ルタバガ
品種名大島かぶ
学名Brassica napus L. var. napobrassica (L.) Rchb. (アブラナ科)
現地での呼称かぶ、かぶ蒸かしのかぶ、にんじんかぶ、さとうかぶ、おおしまかぶ
写真大島かぶ 大島かぶの栽培風景 大島かぶの草姿2 大島かぶの草姿 大島かぶの郷土料理「かぶぶかし」1 大島かぶの郷土料理「かぶぶかし」2 星の玉。宮城県内、三陸沿岸の家々の神棚に飾られる紙である。中にはこのようにカブ(家富)が描かれているものもあり、繁栄の願いが込められている
栽培方法

播種は5月~7月ころ。自家採種したその年の種子をまくこともあるが、前年の種子を5月にまく場合もある。その年の気候や暦によって判断する。

施肥は近年は化成肥料が多いが、古くは、人手、カゼ(ウニ)の殻、マリコ(カラス貝)、ギバ(ホンダワラ)、麦殻などを用いた。

成長の遅いものや、可食部の白いものを間引き、色味の強い個体を残す。

収穫は霜が降りたころがよいとされ、11月から1月ころまで。

採種親には形が良く、色の濃いものを選び、翌年6-7月に採種する。

収穫したものは乾燥させて寒さにあてる。ダイコンに比べて凍みにくい。年中食べられるように生のまま細かく刻んで砂糖をまぶして冷凍保存する。(宮城資料1およびヒアリングによる)

品種特性セイヨウナタネの変種、ルタバガの1系統。首はアントシアニンの紫色、カブの内部はβカロテンのオレンジ色である。甘味があり(糖質8%以上)、食物繊維(5%程度)が豊富である。独特の風味がある。
由来・歴史

大島では、昔は飢饉の年のことを「餓死(ガス・ガシ)年(ドシ)」といい、「ソバとカブはガシドシの作物」とよんだという。天水に頼り、やませしばしば見舞われた大島において、大島かぶは飢饉食として大切に守られてきた。

由来に関してはさまざな説がある。

1)このカブはもともと岩手県一関市室根の矢越集落で昔から栽培されていたもので、明治期に矢越の釘子地区の吉田という人物が大島に種子を伝えたという説。矢越では昭和30年代に栽培がいったん途絶えたが、矢越の山間部にわずかに残っていた矢越かぶと大島出身で矢越に嫁にきた女性が大島から持ち帰った種子から平成6年から本格的に矢越で復活し特産になっている。

2)安永風土記(1780)年に矢越の隣の集落、小梨村(現、一関市室根小梨)から大島村の谷地屋敷に婿入りして農業を始めた人物の記述があることから、このときに伝播した可能性がある。

3)離島であるので、江戸時代は廻船や鰹船などによって人や物の往来があった。島内に自生する古木のユズ、ビワ、チャなども廻船によって運ばれたことから、大島かぶも海路で運ばれてきた可能性がある。

4)北海道の砂糖大根(資料1ではてん菜になっているが、実際はアイヌが栽培していたというルタバガの一種、アタネのことか?)と大島かぶが交配してできたのが、大島に伝わるカブで、北海道では廃れたが、大島に伝わるのみになったという口伝がある。

(以上、宮城資料1による)

伝統的利用法

バレイショなどと一緒に蒸かしたもの、ササゲと一緒に煮て薄く塩味をつけたものを、農作業の間食にした。

江戸時代から凶作時にはかて飯や粥のカテとして利用した。かぶぶかしにアワを入れて米を節約する家があるのは、その名残りだと考えられる。

カブを丸干し、または刻んで煮て乾燥して保存した。現在は刻んで砂糖をまぶして冷凍保存し「かぶぶかし」に利用する。

「かぶぶかし」は細かく刻んだ大島かぶとササゲ(アズキ、インゲン、レーズン、栗なども)を入れて蒸したおこわである。昔は頻繁に食べられていたが、今は節句、祝い事、法事など、ハレの日に食べることが多い。

(以上、宮城資料1)

栽培・保存の現状

島内には1000戸あまりの住民がいて、かつては殆どの家で栽培したが、2015年現在、栽培している家は50戸程度。

気仙沼のヨネキ種苗店で大島かぶの種子を「サトウカブ」」の名称で販売している。

(以上、宮城資料1)

消費・流通の現状大島での自家栽培、自家消費のほか、大島・田尻の青果店フードセンター「まるけん」では、11月の中ごろになると、矢越の農家から仕入れたカブを販売しており、この期間で20-30kgが売れるという(宮城資料1)。
継承の現状2003(平成15年)ころから大島かぶの現状に危機感を持った地元の堺健氏が種子の配布や食体験の機会の提供など大島かぶの普及活動を行って次第に栽培する人が増えた(宮城資料1)。
参考資料
  • 宮城資料1:「大島カブの利用の歴史と民俗文化」気仙沼大島民俗文化研究会 小野寺佑紀編(2015年1月および増補版・2015/11)
  • 宮城資料4:小野寺佑紀 (2023) 「宮城県北部の在来種のルタバガ-大島かぶを事例として-」東北民俗 57:11-19.
調査日
  • 2014/3/21
  • 2014/12/13
  • 2015/11/27