在来品種データベース

「酸茎菜」品種情報
生産地京都府京都市上賀茂
作物名カブ
品種名酸茎菜
学名Brassica rapa L. var. rapa
現地での呼称すぐきな
写真上賀茂神社に奉納展示されている「すぐき」の樽御輿 加圧器が登場する前は天秤重石で押した@加茂賀茂神社 酸茎菜の畑 収穫された酸茎菜 皮むき(面取り)/すぐき加工の前処理 荒押し前に塩が振られた酸茎菜 本漬け用に四斗樽に並べられた酸茎菜 加圧器による本漬け 電気室における発酵 樽出しされたすぐき すぐきの漬物
栽培方法

播種は8月末~9月下旬まで、3,4日おきに段播きする。収穫は11月上旬~12月下旬まで。

栽培者ごとに自家採種しながら維持している。採種親を30-40個体確保すると種子が2升くらいとれる。

品種特性

京都資料1と2によると、種皮型はA型(種子を水に浸すとペクチン様の皮膜ができる)。葉の表面には毛が無く、葉の形には全縁葉形、切葉形、鋸歯葉形の系統がある。かぶは白い円錐形、または卵形や長楕円形のものがある。

京都資料2によると、酸茎菜の原種は昭和のはじめまで上賀茂神社の社家で栽培されていたが、その後絶滅したようである。明治の初めころから聖護院かぶあるいは蕓苔(うんだい)との交雑が進み、それぞれ原種に近い全縁葉形と新しい菊葉(切葉)形の系統が生まれたと考えられている。鋸歯葉形はさらに新たに出てきた系統である。

由来・歴史京都資料1によると、慶長年間(1596-1614)に上賀茂神社の神職者が自分の屋敷で栽培し始めたのが始まりといわれている。京都資料2は、酸茎菜が『日次記事』(1667)を初出として、江戸時代から明治期まで多くの文献に登場することを紹介している。このことから少なくとも酸茎菜は350年以上の歴史を持つことは明らかである。
伝統的利用法

すぐき

<すぐきの加工法>根部の皮をむいて(面取り)大きな樽に塩を振りながら入れ、一晩おく。四斗樽に底から渦巻き状に一段ずつ塩を振りながら並べ、10日ほど押しながら漬ける。40℃の部屋に一週間ほど置くと発酵が進み、すぐきができる。

押し漬けには加圧器を使うが、昭和初期から長い間天秤が使われていた。また加温にはかつて練炭火力が用いられたが、現在は電気室(むろ)を利用する。

漬物としてそのまま食べたり、刻んでお茶漬けにする。最近はチャーハンの具材にしたり、刻んだ葉をマヨネーズと混ぜて食パンに載せ、チーズを載せてトーストにする食べ方もある。

栽培・保存の現状「京の上賀茂すぐき倶楽部」の会員が30名以上(20-60歳代)いて、栽培技術や漬け込み技術の向上を研究するほか、販売促進を行っている。
消費・流通の現状農家が加工・販売を行うほか、加工したものを漬物屋に出荷している。
継承の現状栽培・保存の現状に同じ。
参考資料
  • 京都資料1)青葉高著(1981)「野菜」法政大学出版局
  • 京都資料2)高嶋四郎編著(2003)「歳時記 京の伝統野菜と旬野菜」トンボ出版
  • 京都資料3)京賀茂野菜すぐきhttp://kyokamoyasai.jp/suguki/index.html
調査日2022/12/13