根部の肉質は締まり、濃紅色で光沢のなめらかな肌で、やや扁平の丸カブである。函館紅カブのなかでも古くから品質が優れることで知られる1系統「亀田の赤カブ」(亀田川流域の鍛冶、神山、赤川の砂礫土壌帯で栽培)の生産者は外観の美しさにこだわって採種をしているという。カブの根肉色は白く、赤い色素がしもふり状に入ること、また茎の付け根をカットした断面がダリアの花のように見えること、などである。 道南の北斗市大野平野を中心として栽培されてきた赤カブとして‘大野紅(おおのあか)かぶ’が有名である。それは多くの書物にA型種皮、濃緑の葉、淡紅色の葉柄、カブの表皮は紅色として記載がある。しかし、道南に現存する赤かぶは全てB型種皮で、濃紅や緑の葉、濃紅色の葉柄、カブの表皮は紅色であり、‘大野紅かぶ’の形質とは異なるものであった。したがって、道南には‘大野紅かぶ’はもはや現存せず、別のカブ(‘函館紅かぶ’に置き換わっていることが明らかになった(北海道資料8)。 今回(2021年10月30日)のヒアリングで、札幌の市場ではかつて赤さが濃いもの、霜降りがよく入るもの評価が高かったと聞いた。このことも‘大野紅かぶ’が‘函館紅かぶ’に置き換わっていったきっかけになったのではないかと考えられる。 |