在来品種データベース

「函館紅かぶ」品種情報
生産地北海道函館市
作物名カブ
品種名函館紅かぶ
学名Brassica rapa L. var. rapa
現地での呼称あかかぶ
写真函館紅かぶの1系統(亀田紅かぶ) 函館紅かぶの1系統(亀田紅かぶ) 函館紅かぶの1系統(亀田紅かぶ)のB級品 函館紅かぶの1系統(亀田紅かぶ)の茎基部のダリア状断面 函館紅かぶの1系統(亀田紅かぶ)の茎基部の根部断面 紅かぶ(紅葉) 紅かぶ(緑葉)
栽培方法

播種は一般的には7月下旬から8月15日ころだが、現在はお盆ころ。盆前の時期だと温暖化で成長が早すぎるようになった。収穫は10月下旬から11月上旬。

そうか病や根こぶ病が発生するので、トウモロコシ、ニンジン、バレイショ、カブの輪作を行う。採種用には30個くらいのカブを地中に埋めておく。

品種特性

根部の肉質は締まり、濃紅色で光沢のなめらかな肌で、やや扁平の丸カブである。函館紅カブのなかでも古くから品質が優れることで知られる1系統「亀田の赤カブ」(亀田川流域の鍛冶、神山、赤川の砂礫土壌帯で栽培)の生産者は外観の美しさにこだわって採種をしているという。カブの根肉色は白く、赤い色素がしもふり状に入ること、また茎の付け根をカットした断面がダリアの花のように見えること、などである。

道南の北斗市大野平野を中心として栽培されてきた赤カブとして‘大野紅(おおのあか)かぶ’が有名である。それは多くの書物にA型種皮、濃緑の葉、淡紅色の葉柄、カブの表皮は紅色として記載がある。しかし、道南に現存する赤かぶは全てB型種皮で、濃紅や緑の葉、濃紅色の葉柄、カブの表皮は紅色であり、‘大野紅かぶ’の形質とは異なるものであった。したがって、道南には‘大野紅かぶ’はもはや現存せず、別のカブ(‘函館紅かぶ’に置き換わっていることが明らかになった(北海道資料8)。

今回(2021年10月30日)のヒアリングで、札幌の市場ではかつて赤さが濃いもの、霜降りがよく入るもの評価が高かったと聞いた。このことも‘大野紅かぶ’が‘函館紅かぶ’に置き換わっていったきっかけになったのではないかと考えられる。

由来・歴史

北海道資料8によると、道南で現在栽培されている赤カブは90年近く前(明治期)に函館市のM氏の祖先が来道したときに、青森県福地村(現南部町)から持ち込んだ種子が函館市内に広がったことが確認できたという。さらに函館市以外の在来種も北斗市(旧上磯町)の系統を除いて函館市内に由来する系統であることを確認したとのこと。

道南の赤カブは、夕張炭鉱への貨車に俵詰めで乗せて運ばれ、飛ぶように、しかもとんでもない高値で売れたという。

伝統的利用法冬期の越冬野菜として、ジャガイモ(男爵)の裏作としてダイコンとならんで栽培されて、千枚漬けなど漬物加工に利用された。かつては大きな需要があったが、現在は小さくなった。
栽培・保存の現状2014(平成26)年に販売用の「赤かぶ」を栽培している生産者は、函館市、北斗市、知内町を中心に31戸(約21ha)であった。2020(令和2)年は函館市を中心に北斗市知内町、木古内町をあわせて23戸(8.5ha)に減少した。
消費・流通の現状函館市場を中心、一部は道内市場に出荷。直売所での販売や自家用の栽培もみられる。JAか、市場へ出荷する。相場の高い方。
継承の現状栽培・保存の現状を参照。
参考資料北海道資料8)道南の伝統野菜「大野紅かぶ」についての一考(山口和彦著、農家の友、2015年11月号、48-49ページ)
調査日2021/10/31