ジーンバンクについて
農業生物資源ジーンバンクは、農業分野に関わる植物・微生物・動物遺伝資源について探索収集から特性評価、保存、配布および情報公開までを行う事業です。茨城県つくば市の農研機構遺伝資源研究センターに本部(センターバンク)を置き、全国各地にある植物・微生物・動物各部門のサブバンクと連携して我が国の食料・農業上の開発および利用等に貢献するための生物遺伝資源の国内外からの収集・受入、増殖・保存、特性評価、配布および情報の管理提供ならびに生物遺伝資源の高度化のための試験研究を行うとともに、海外の試験研究機関等との協力により遺伝資源の保全に取り組んでいます。
豊かな未来をひらくジーンバンク(2019年制作)
沿革
1953年 | 主要作物の育種材料研究室を設置 |
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1966年 | 神奈川県平塚市に遺伝資源種子保存庫を建設 |
1978年 | 遺伝資源種子保存庫を現在のつくば市に移転 |
1985年 | 全国的ネットワークを有する「農林水産省ジーンバンク事業」スタート(植物・微生物・動物部門) |
1993年 | DNA部門運営開始 |
2001年 | 「農業生物資源ジーンバンク事業」に名称を変更 |
遺伝資源の状況
数千年におよぶ農業の歴史の中で、人類はさまざまな生物を利用し品種改良などを行ってきました。近年では、遺伝子工学の発展によりすべての生物は「遺伝資源」として活用できると考えられるようになっています。しかし、大規模な自然破壊や近代種の急激な普及のため、この貴重な遺伝資源は刻一刻と失われています。遺伝資源は、一度失われると二度と取り戻すことはできません。豊かな未来のため、遺伝的多様性を保全することは緊急の課題です。
探索収集
遺伝資源の多様性を確保すべく、当ジーンバンクでは探索収集活動を積極的に行っています。毎年国内外に探索隊を派遣し、新たに登録される遺伝資源は年間5000点以上にもなります。多くの遺伝資源にはまだ解明されていな潜在的な価値があると考えられるため、現在農業に直接かかわっている品種だけでなく、近縁種や野生種についても対象にしているのです。
分類・同定・特性評価
探索収集により蓄積した遺伝資源について、どのような特性を持つのかあらかじめ明らかにしておけば、効率よく研究・育種などを行うことができます。例えば、植物では形態的な特徴、耐病虫性や品質などの特性を、微生物では培養性状、顕微鏡的特徴や植物に対する病原性、物質生産の活性などを調査します。さらに、より正確な分類や種内多様性の解明を行うため、DNA解析も利用しています。
保存
収集した貴重な遺伝資源を安全・確実に保存することも当ジーンバンクに課せられた重要な役割の一つです。保存にあたっては、遺伝資源の種類に応じた最適な方法を検討し、発芽率や増殖率等によって活力を随時モニターしています。また、遺伝資源の配布が極力迅速に行えるよう、長期保存用遺伝資源と配布用遺伝資源とで保存形態を変えるなどの工夫も行っています。
配布・情報提供
ジーンバンクで保存している遺伝資源は、試験研究等を利用目的とする配布申込を随時受け付けています。毎年、1万点近くの遺伝資源が国内外に配布されており、さまざまな研究に貢献しています。また、探索収集・導入、特性評価、保存などを通して得られた知見は遺伝資源データベースとして蓄積され、これらはインターネットを通して広く発信しています。