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クレオルビーン [Vigna glabrescens Marechal, Mascherpa & Stainier]

解説

日本における状況と農業生物資源ジーンバンクからの情報
Vigna glabrescens は日本での栽培はみられず,利用もされていない。祖先野生種と考えられる V.reflexo-pilosa は日本にも分布しており,鹿児島県(奄美大島,喜界島,徳之島)と沖縄県に分布している。
これまで世界のジーンバンクを見渡してもフィリピン産の1点が保存されていただけであったが,1994年にMAFFのベトナム探索によってベトナム北部で新たに2点の V.glabrescens が収集された。ベトナム北部で V.glabrescens が裁培されていた村では,このマメは「褐色の種子のリョクトウ」と呼ばれ,食用にされていた (小林ら 1994)。
起源
V.glabrescens はアズキ亜属(Ceratotropis)に属する,世界的にほとんど知られていない一年生の栽培種である (Baudoin and Marechal, 1988)。この栽培種はおそらく東南アジアで野生種 V.reflexo-pilosa から栽培化されたと考えられる (Egawa and Tomooka. 1994)。
野生種 V.reflexo-pilosa の分布は台湾と琉球に限られると考えられていたが,Tateishi (1984) は東南アジアやオセアニアで収集され, V.mungo, V. radiata var.sublobata, あるいは Phaseolus calcaratus (=V.umbellata)と同定されていた多くの標本が実は V.reflexo-pilosa であることを示した。
分類
Baudoin and Marechal (1988)によれば,V.glabrescens は最初 Roxburgh によって1832年に Phaseolus glaber という名で”Flora Indica”に記載された。そこでの記載によれば,この種の種子はモーリシャスからカルカッタの植物園に入ってきたもので,モーリシャスでは ”Lentille de Creole”という名で裁培されていた。 Verdcourt (1970) は P.glaber はリョクトウ(V.radiata)の無毛変種であるとし,V. radiata var.glabra と命名した。Swindell et al. (1973) は,フィリピン産の系統を細胞遺伝学的に分析して,この系統が複二倍体であることを明らかにした。彼らは,分析に用いた系統はおそらく V.radiata var.glabra であると述べている。 Marechal et al.(1978) は,このフィリピンの系統が Roxburgh が命名した P.glaber のタイプ標本と完全に一致することを示し,V.glabrescens M,M & S と命名した。
これに対しTateishi(1985)は,V.glabrescens V.reflexo-pilosa の栽培型であると考え,V.reflexo-pilosa の亜種として取り扱う提案をし,V.reflexo-pilosa var.glabra と命名した。 V.glabrescensV.reflexo-pilosa は相互に交雑可能でF1雑種の念性が高いこと(Tomooka et al. 1991),種子タンパクのサブユニット構造や数種のアイソザイムのザイモグラムパターンがほぼ同じであること(友岡ら. 1992, Egawa and Tomooka 1994)およびRAPD分析に基づく近縁度が高いこと(友岡ら. 1995)などを総合的に判断すると,V.glabrescensV.reflexo-pilosa を同一種として扱うTateishi(1985)の分類は妥当であると考えられる。2n=44。
特徴
V.glabrescens の形態は無毛のリョクトウという感じである。花はリョクトウに比べて大きく,花色はリョクトウより濃く輝きがある。左側の竜骨弁についているポケットと呼ばれる突起はリョクトウのものに比べて長い。種皮は平滑で暗褐色。発芽はリョクトウが地上子葉型であるのに対し地下子葉型。V.glabrescens は,多くの病害虫に対して高い抵抗性を示す (Fernandez and Shanmugasundaram, 1988)。
利用
西ベンガル地方では飼料作物として利用されていた (Baudoin and Marechal, 1988)。ベトナムではリョクトウと同じように利用されていた (小林 ら 1994)。
AVRDC (Taiwan)では,リョクトウ育種の耐虫性遺伝子供給源としての利用が試みられてきた (Fernandez and Shanmugasundaram, 1988)。
参考文献
Baudoin,J.P. and R.Marechal, 1988. Taxonomy and evolution of genus Vigna. In "Mungbean", Proc. 2nd Int. Symp. AVRDC. Shanhua, Taiwan. pp.2-12.
Egawa,Y. and N.Tomooka 1994. Phylogenetic Differentiation of Vigna Species in Asia. JIRCAS International Symposium Series 2 : 112-120.
Fernandez,G.C.J. and S.Shanmugasundaram. 1988. The AVRDC Mungbean Improvement Program: The Past, Present and Future. In "Mungbean", Proc. 2nd Int. Symp. AVRDC. Shanhua, Taiwan. pp.58-70.
小林勉,島田尚典,N.Q.Thang ,L.T.Tung. 1994. ベトナムにおける豆類遺伝資源の探索収集.植物遺伝資源探索導入調査報告書 Vol.10: 141-169.
Marechal,R., J.M.Mascherpa and F.Stainer. 1978. Etude taxonomique d'un groupe complexe d'speces des genres Phaseolus et Vigna (Papilionaceae) sur la base de donnees morphologiques et polliniques, traitees par l'analyse informatique. Boissiera 28.
Swindell,R.E., E.E.Watt and G.M. Evans. 1973. A natural tetraploid mungbean of suspected amphidiploid origin. J.Hered. 64:107.
Tateishi,Y. 1984. Contributions to the Genus Vigna (Leguminosae) in Taiwan I. Sci. Rep. Tohoku Univ. 4th ser. (Biology) 38: 335-350.
Tateishi,Y. 1985. A revision of the Azuki bean group, the subgenus Ceratotropis of the genus Vigna (Leguminosae). Ph.D. Thesis, Tohoku University, Sendai, Japan.
Tomooka,N., C.Lairungreang, P.Nakeeraks Y.Egawa and C.Thavarasook. 1991. Mungbean and The Genetic Resources, The Subgenus Ceratotropis. Tropical Agriculture Research Center, Japan.
友岡憲彦,Enrique Penaloza, Avella Dela Vina, 江川宜伸.1992.南西諸島で収集したアズキ近縁野生種に見られた種子タンパク及びアイソザイム変異. 育種学雑誌(別冊2):568-569.
友岡憲彦, V.A.Sumanasinghe, 加賀秋人,江川宜伸. 1995. RAPD分析法によるアジア産 Vigna属の類縁関係の推定.育種学雑誌 Vol.45 (別冊 1):181.
Verdcourt,B. 1970. Studies in the Leguminosae - Papilionoideae for the "Flora of Tropical East Africa" : IV. Kew Bulletin 24.