ケツルアズキ

[Vigna mungo (L.) Hepper]

種子

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<日本における状況と農業生物資源ジーンバンクからの情報>
日本ではケツルアズキの栽培はみられず,近年まで利用もされていなかった。最近になって,モヤシの原料としてタイやミャンマーからこのマメを輸入するようになった。

<起源>
ケツルアズキはその祖先野生種と考えられている V.mungo var.silvestris Lukoki, Marechal & Otoul からインドで栽培化されたと考えられている。遺伝的多様性中心もインドにある(Zeven and de Wet. 1982)。 野生種 V.mungo var.silvestris の自然分布範囲はインドからミャンマーにかけての地域である (Tateishi. 1996)。

<分類>
ケツルアズキはササゲ属(Vigna)アズキ亜属(Ceratotropis)に属する一年生草本である。以前はインゲンマメ属(Phaseolus)に入れられていたことがあった。 Vigna 属は,近縁のPhaseolus 属とともに, Phaseolus-Vigna complex と呼ばれる分類学的に複雑な分類群を形成している。 Verdcourt (1970) は, Phaseolus 属をアメリカ起源で花柱がコイル状に3回程度回転し荒い網目模様のない花粉粒をもつ種に限ることを提案し,Phaseolus 属の概念を明確にした。これに伴って Vigna 属の概念は広がり,ケツルアズキを含むいくつかの種が Phaseolus 属から Vigna 属へ移された。 Marechal ら (1978) は,Verdcourt の提案を受け入れ Phaseolus-Vigna complex の新分類体系を発表した。彼らの新分類体系が,現在最も広く受け入れられている。

以前ケツルアズキとリョクトウ(V.radiata)との分類が混乱していた時期があった。Verdcourt (1970) は,ケツルアズキとリョクトウは同種であるとする説を提出した。しかし Marechal ら (1978)は,これら2種は明らかに独立した別種であるとし,この考えがその後多くの分類学者に受け入れられた。 Lukoki ら(1980)によれば, V.mungoには2つの変種が認められている。ひとつは栽培種ケツルアズキ(V.mungo var.mungo)であり,その祖先野生種として V.mungo var.silvestrisが記載されている。 2n=22。

<特徴>
ケツルアズキは直立またはほふく性の一年生食用マメ科作物である。近縁で分類の混乱していたリョクトウとは次のようないくつかの区別点があげられる。ケツルアズキの花色は 黄金色であるが,リョクトウの花色は淡黄色である。 アズキ亜属の特徴である左側の竜骨弁の突起はケツルアズキの方がリョクトウより長い。ケツルアズキの莢は上向きに,リョクトウの莢は横向きにつきケツルアズキのさやよりも長い。ケツルアズキの種子色は鈍い黒が多いが,光沢のある緑や黒の品種もネパールなどには多い。リョクトウは古くからアジア全域に広がったが,ケツルアズキを伝統的に栽培してきたのはインドおよびパキスタン,アフガニスタン,バングラデシュ,ミャンマーなどに限られる。

<利用>
ケツルアズキは,主として南アジアにおいて挽割りにしてダールとして食べられている。

<引用文献>
Lukoki,L., R.Marechal and E.Otoul. 1980. Les ancetres sauvages des haricots cultives: Vigna radiata (L.)Wilczek et V.mungo (L.)Hepper. Bull. Jard. Bot. Nat. Belgique. 50: 385-391.

Marechal,R., J.M.Mascherpa and F.Stainer. 1978. Etude taxonomique d'un groupe complexe d'speces des genres Phaseolus et Vigna (Papilionaceae) sur la base de donnees morphologiques et polliniques, traitees par l'analyse informatique. Boissiera 28 : 1-273.

Tateishi,Y. 1996. Systematics of the species of Vigna subgenus Ceratotropis. In "Mungbean Germplasm : Collection, Evaluation and Utilization for Breeding Program" JIRCAS Working Report No.2. pp.9-24. Japan International Research Center for Agricultural Science (JIRCAS), Japan.

Verdcourt,B. 1970. Studies in the Leguminosae - Papilionoideae for the "Flora of Tropical East Africa" : IV. Kew Bulletin 24 : p.559.

Zeven,A.C. and J.M.J. de Wet 1982. Dictionary of cultivated plants and their regions of diversity. Centre for Agricultural Publication and Documentation, Wageningen.


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